「それでね、理系の学部は実験とかで週末もつぶれるとか、夜中まで張り付かなきゃとか聞いて、絶対無理だなって」

「あー、あれはホント、大変そうだったよね」

 細かなことは知らないけど、進路について考える会とやらいう企画で、何度か大学の先輩たちが自分たちが何を学んでいるのかを話しに来てくれた。そこで、そんな事を聞いたのを思い出す。

 と言うか、ハルはどの学部だって問題なく通るだろうけど、工学部とか理学部を選ばれたら、オレは希望が通らない可能性がある。正直、ハルが理系を選ばないでいてくれてありがたかった。

 言い訳すると、オレの成績が激しく劣っているというより、推薦時、理系学部は理系の成績が200%で計算されるのが問題なんだ。つまり、オレは文系の方が得意だったりする。だから、同じく人気学部でも経営学部なら大丈夫……なはず。

「教育学部とかね、勉強する内容はとても面白そうで、学んでみたいなと思うのだけど、先生にはなれないし……」

 何故なれないのか、ハルは言わない。だけど、体力的に絶対無理だと言うのは、言葉にしなくても分かる。教師を目指さないのに、教育学部に籍を置くと言うのもつらいだろう。

「うーん。ハル、教えるの上手だから、本当なら先生も悪くないだろうけど、結構過酷な仕事らしいもんな」

 って、部活の顧問で土日もないとか最近よくニュースになってるよね? 周りに先生やってる知り合いがいないから、本当のところよく分からないけど。自分たちの学校の先生はそんなに忙しそうには見えないけど、きっと影では忙しくしているんだよな?

「だよね。……でね、色々考えて、心理学部と経営学部で悩んだんだけど」

 ハルはそこで少し言葉を区切る。
 オレから視線を外し、ハルの視線が宙をさまよった。

「……あのね」

 随分と長い間の後、ハルはオレを見ないままに話し出した。