15年目の小さな試練

「ハルちゃん、はい。約束の先生の予定」

 お昼休み、ご飯を食べるのが遅いわたしが、食べ終わるのを待ってから晃太くんに渡されたのは、山野先生の空き時間を書いた紙。

 お願いした翌日のお昼休み。あまりの早さにビックリ。晃太くんがランチに誘ってくれた時から、もしかしてとは思っていたけど。

「ありがとう」

 神妙な表情で受け取ると、ポンポンと肩を軽くたたかれた。

「肩の力を抜いて」

 と晃太くんは笑う。

「見せて」

 と、カナがわたしの手元を覗き込む。

「金曜日の夕方か、月曜日の夕方かな」

「……ん。いつ伺いますって連絡した方が良いかな?」

「しておいた方がいいかも知れないね」

 晃太くんが口を挟む。

「研究室って、けっこう、ゼミのメンバーとかが集まるからさ」

「そっか~。どうやってアポとろうかな」

 カナが悩ましいという顔をする。

「ハルちゃんから、相談があるからお時間くださいって連絡したら?」

「それでいいの?」

 わたしが聞くと、晃太くんは笑顔で教えてくれた。

「うん。学部生でも熱心な子は質問に来たりするし、問題ないと思うよ。相談って言うなら、それはそれで嘘じゃないし」

「でもさ、その連絡って電話でするの? それとも研究室に訪ねていくの?」

 カナがもっともな質問をした。

「ああそっか、俺が聞いておいてもいいけど」

「なんて?」

「妹が相談したいことがあるって言ってるから時間くださいって。……ああそうだ。当日も同席しようか?」

 晃太くんは優しくわたしをじっと見つめた。