15年目の小さな試練

 ハルがふうっと息を吐く。

「ごめんね。……疲れちゃった。寝ようかな」

 ハルはそう言うと、ゆっくりと、気だるげに立ち上がった。オレも一緒に立ち上がって、ハルの肩を抱いて支える。

 ベッドの掛け布団をめくり、ハルが中に入るのを見届けていると、キュッとハルがオレの袖を引いた。

「……カナも、一緒に、寝よ?」

 ハルがオレを真っ直ぐ見上げてきた。

 そんなハルの誘いを、オレが断れる訳もなく、

「じゃ、そうしよっかな」

 と、オレはいそいそと部屋の電気を消すとハルの隣に潜り込んだ。
 そして、ふと思う。

「ね、ハル」

「なあに?」

「特別扱いが、イヤだったんだよね?」

「……ん」

「でもさ、今、嬉しかった山野先生の授業で、ハル、明らかに特別扱いされてるよね?」

 オレの言葉に、ハルは、

「……え?」

 と小さく声を上げ、その身体が瞬時に固まった。

「だって、ハルだけ明らかに次元の違う課題もらってる訳だし」

「……そう、かな?」

 オレの課題もたまに見ているハル。
 だから、そこにある大きな難易度の差はきっと分かっている。

「兄貴がさ、ハルがやってるのは、大学四年でやる課題って言われてもおかしくないとか言ってたよ」

「……まさか」

 そう言うハルの声には力が入らない。

 まさかと言いつつも、きっとハルは分かってしまったと思う。

「そっちの特別扱いなら、気にならない?」

 オレの問いは、意地が悪かっただろうか?

 ハルの身体がビクリと震えて、ハルが薄明かりの中、オレの方に目を向けた。