最近、先生が書いてくれる解答へのコメントが少し冷たい。

「なるほど、そのような方法もありますね。でも、あと一歩踏み込んで、〇〇という観点でも考えられたら良かったと思います」

 何度かそんな風に書かれていたものだから、先生のコメントを参考に新しい本を買って読んでみた。次の課題では、先生のアドバイスを活かせるようにと。

 だけど、コメントには厳しい一言が書かれていても、評価自体は相変わらず高かった。

 コメントを読む限りでは、決して良い出来ではないはずなのに、評価は不自然に高かった……。



 冷静に考えたら、先生がわたしに求めるレベルは高すぎると思う。
 晃太くんが気にするくらいには、きっとおかしいのだろう。
 班のみんなが憤ってくれるくらいには、普通じゃないんだろう。

 ……なんで、先生は、わたしにだけ難しい課題をくれるのかな?

 でも、答えは出ない。

 難しい問題でも、解けてしまったから?

 それくらいしか思い当たる理由がない。



「ハル。……ねえ、ハル」

 カナの声にハッと意識を現実に戻す。

 自室のデスクの上、手元に開いた課題は1ページ目で止まったまま。

 山野先生の課題は、ちゃんと頭が働いていないととても解けない。だから、うっかりやりそびれないように早めに片付けようと思って課題を開けたはいいけど、結局、そのまま物思いにふけってしまった。

 あんまり調子が良くないのかも知れない。いつも楽しく読んでいた課題が、まったく頭に入っていない。

 高熱が続いた事で落ちた体力も、まるで戻っていないし……。