「どういたしまして!」

 楽しそうなえみちゃんの声を聞きながら頂いたケーキを口に入れると、甘酸っぱい木苺のソースの味が広がった。

「……おいしい」

「でっしょー?」

 得意げなえみちゃんが、もう一口くれようとしたのを、今度こそ遠慮して、自分の紅茶に口を付ける。

 しばし、ケーキが美味しいとか、次は違うケーキも食べてみたいとか、そんな話をした後に、えみちゃんが真顔になって言った。

「えっとさ、……なんか、ごめんね」

「……なにが?」

 えみちゃんの言う「ごめんね」の意味が取れない。

「んー、私、多分、すっごくおしゃべりで、気遣いができてないと思うんだよね。噂話とか好きだし、知りたがりやだし。

 高校まではずっと公立に通ってて、こんなお嬢さま、お坊ちゃまがいっぱいの大学に入って別世界ってものを見ちゃってさ、更にハルちゃんと叶太くんの熱愛話とか聞いて、なんかすごくテンション上がっちゃって。

 ……だけど、ハルちゃんも叶太くんも別に芸能人って訳じゃないし、嫌だよね、こういうの」

 おしゃべりで気遣いができていなくて噂好きの知りたがりや。そう言えば、着ている服とか、持っている鞄とかに興味を持っていた事もあったと思い出す。

 その言葉の幾つかは確かに、えみちゃんにぴったりかも知れなかった。知りたがりやとか噂好きとかおしゃべりとか。

 だけど、えみちゃんのそれは、ただの好奇心で、まるで悪意がなかったから、

「ううん、大丈夫」

 そう笑顔で答えられた。