「えっと、取りあえず食べよっか! ってか、ハルちゃんは飲もうか、だね」

 えみちゃんはクスクス笑いながら、目の前のケーキに目をやる。

「うわ。美味しそう~! いっただっきまーす!」

「……いただきます」

 限りなくテンションの高いえみちゃんに付いて行けず、わたしは静かにティーカップを持ち上げた。

「あ。美味しい! ハルちゃん、一口食べる?」

 わたしはティーカップに口を付けたばかりなのに、えみちゃんは既に数口目のケーキを口にしていた。

 明るくて元気でテンション高くて、更に動きまで速いえみちゃん。

「ううん。大丈夫」

 断ると、えみちゃんは、

「ハルちゃん、ちょっとスプーン貸して」

 と言う。

 そこに何の意図があるのか分からないままに、言われた通りに紅茶に付いてきたスプーンを渡した。

「ありがと」

 えみちゃんはにっこり笑って受け取ると、わたしのスプーンをケーキのはしっこに刺した。

 ……え、っと?

 えみちゃんはスプーンでケーキをすくって、はい、どうぞとばかりに差し出し、

「美味しいよ。木苺、きっと生のが入ってる」

 と満面の笑顔を見せる。

 そして、目の前にはわたしのスプーンに乗ったえみちゃんのケーキ。

 差し出されたものを断るのもどうかという思いと、わき上がってきた「生の木苺、美味しそう」という、さっきまでの話から現実逃避したいという思いが重なって、わたしは、

「あの……ありがとう」

 と、えみちゃんのケーキを受け取った。