「……あの、……はい」

 思わず、俯くわたし。

「えっとね、ハルちゃん、ただ身体が弱いだけじゃなくって、心臓が悪いって聞いたんだよね」

 ただ身体が弱いだけじゃなくて、心臓が悪い……。

 そして、叶太くん、かわいそう……という言葉。

 また、ズシンと胃が重くなる。

 だけど、えみちゃんの言葉には何の悪意も含まれていない。
 だから、わたしはそのまま続きを待つ。

「心臓が悪いって言っても、ちょっと悪いとかじゃなくて、かなり悪いんだよね?」

 さすがに、えみちゃんが気を使ってか声を潜めた。

「……うん」

 ギリギリ学校生活を送れるくらいではあるけど、わたしの心臓の状態は、間違いなく、ちょっと悪いではなく、かなり悪い方だ。

「で、ね。だったら、叶太くん、いっぱい我慢してるだろうなって話になってサ」

 ……我慢。

 やりたいこともできず、いつも、わたしの事ばっかり心配してるカナ。

 そうだよね、我慢、してるよね。

「心臓悪いと、あんま激しい運動とかできないんでしょ?」

「うん」

 激しくない運動だって、禁止なんだから、激しい運動とかぜったい無理。

「高校生で最愛の女性と結婚したのにさ、思う存分やれないとか、拷問だよねーって」

 ……思う存分、やれない?

 ……拷問?

 ……えっと、なにを?

「いや、だって、その年頃の男子なんて、やりたい盛りだよね?」

 えみちゃんは当然のように言う。

 だけど、わたしにはえみちゃんが何を言いたいのか、分からない。