15年目の小さな試練

 わたしが呆然としている間に、えみちゃんは興奮した様子でどんどんおしゃべりを続ける。

 ……なんか、色々と誤解も混じっているみたいだけど、どうしよう?

 高等部からの友人たちは、わたしがお嫁に行ったんじゃなくて、カナがお婿に来たのだって、よく知っている。

 だけど誰から聞いたのか、えみちゃんの知っている話は多分、まわりまわってどこかでおかしくなってしまっている。

「あの、えみちゃん……」

「あ、ごめん! なんか、すごく興奮して、わたしばっかりいっぱいしゃべっちゃった」

 えみちゃんは、わたしの小さな声にもちゃんと反応してくれて、おしゃべりをスッと止めた。

 そんな素直な反応にも戸惑う。

「えっと、何か聞きたいことがあったんだっけね?」

 と、言葉が出ないわたしに、えみちゃんは助け舟を出してくれた。

 頬杖をついて、

「なんでも、どうぞ?」

 と聞かれると、さて、どう話そうと、また迷いが出る。

 だけど、迷っていても仕方がない。こんなところまで連れてきておいて、何も聞かないという選択肢はない。

「あの、ね。今日のお昼……」

「うん」

「えみちゃんが、『叶太くん、かわいそう』って言ってるの、聞いちゃって」

「え?」

 えみちゃんが、小首を傾げた。

「そんなこと、言ったっけ?」

 と言うえみちゃんの表情に、嘘はなかった。

 だけど、数秒後、

「あ!」

 とえみちゃんは笑った。

「なに、ハルちゃん、あれ聞いて、気になっちゃったんだ?」

 身を乗り出してくるえみちゃん。