15年目の小さな試練

「いや、実はあんまりは知らないんだけどね。幾つか聞いておいた」

 ……一体、いつの間に?

 わたしが目を丸くして、カナを見ると、カナはポンとわたしの頭に手を置いて、

「兄貴に聞いといた」

 と笑顔を見せる。

 ……だから、一体、いつの間に?

 授業が始まる前? もしかして、授業中!?

「……ハルが授業の準備をしてる間だよ」

 わたしの懸念に気付いたカナが苦笑いしながら教えてくれた。
 確かに、わたしの動作はとってもゆっくりだから、それくらいの時間はあったかも。

 そんなわたしたちのやり取りを見て、えみちゃんはクスクス笑った。

「ホント、仲いいね~」

 そこに変な意味は込められていないように感じる。

 だからこそ、わたしはきっと、えみちゃんに直接聞いてみようと思ったんだな、と思い当たる。

「じゃ、行こうか」

 カナに背中を押されて、わたしたちはゆっくりと歩き出した。

「誘ってくれて、ありがとね」

 えみちゃんは嬉しそうに言う。

「こっちこそ、突然、ごめんね」

「ううん。嬉しかった!」

 カナは歩きながら、カフェに予約の電話を入れているみたい。
 カナが電話をしているからか、えみちゃんの足取りも自然とゆっくりになる。

 エレベーターホールに着くころには電話も終わっていて、カナはえみちゃんに、

「気に入らなかったらごめんね」

 と声をかけていた。