15年目の小さな試練

「……ハル?」

「あ、でも、後でちゃんと話すから」

 そう言うと、カナは困ったように眉根を寄せながらも、

「……じゃあ、どこか落ち着いて座って話ができるところで、ね? 後、オレもハルの顔が見えるところに座るからね?」

 と妥協案を出してきた。

「そんな、長話じゃないんだけど」

「ダーメ。さっきまで具合悪くして寝てただろ」

「カナが大げさだっただけで、具合が悪かった訳じゃ……」

 ちょっとトラウマを刺激されて、不整脈が出ただけで……って言ったら、きっともっと心配をかけるか……。

「学内のカフェ? うーん、微妙に落ち着かないかな。あ、いっそ家に来てもらう? ……あーでも、それも微妙かなぁ」

 カナの中では、いったい、どれだけ長時間話すことになっているんだろう?

 この教室は次の授業で使うかも知れないし、誰かに聞かれるのもどうかなって思うから場所は変えたいけど、人さえいないなら、いっそ廊下で立ち話でも良いくらいなのに。



「ハルちゃん、どこで話す~?」

 授業が終わると早々にえみちゃんが声をかけてきた。
 相変わらず、明るくて元気でテンションが高い。

「あ、えっと……」

 わたしがどう答えるか迷ってる間に、

「学内のカフェと、外に出てどっかお店に入るのと、どっちが良い?」

 カナが隣から口を出してきた。

「……え、カナ?」

 だけど、わたしが何か言うより前に、えみちゃんは嬉しそうに両手を打った。

「わ、外のお店がいい! どっか、良いところ知ってる?」