15年目の小さな試練

「あ! えみちゃん!」

 一時間半、医務室で横になって休んだ後、四限目の教室に入ると、えみちゃんの顔が目に飛び込んできた。

 少しだけドキンとしたけど、不整脈を起こすようなこともなく、わたしは反射的にえみちゃんの名を呼んでいた。

「ハルちゃん?」

 友だちらしき人とのおしゃべりを中断して、えみちゃんは不思議そうにわたしの顔を見た。

「あのね、ちょっと教えて欲しいことがあるの」

 えみちゃんはわたしの言葉に嬉しそうに笑った。

「いいよ。何でも聞いて!」

 カナが隣で戸惑っているのが分かった。

「あ、……えっと、授業の後で、少し時間もらえる?」

「もちろん! ……って言いたいけど、旦那さまはOKなのかな?」

 えみちゃんが小首を傾げて、わたしの隣のカナを見上げた。

「……えっと、ハル?」

 カナは困ったようにわたしを見た。

「少しだけ、えみちゃんとお話しても、いい?」

「……ハルが、そうしたいなら」

「ありがとう!」

 カナの言葉に笑顔を返すと、それを見たえみちゃんは、

「じゃあ、後でね」

 とニコリと笑って手を振った。

 そのまま前に進み、空いた席に座ると、

「オレも同席してもいい?」

 とカナが聞いてきた。

「ダメ」

 即答すると、カナは絶句。

「……ええっと、なんでか聞いてもいい?」

「ダメ」

 それにも同じ答えを返すと、カナは目を丸くした。