15年目の小さな試練

「叶太くん、かわいそう」

 医務室で横になっていても、その言葉が耳を離れない。

 ……カナは、かわいそう、なのかな?

 そうではないと思いたかった。
 だけど、わたしはいつ倒れるか分からないような身体で、いつだってカナに心配かけてばかり。

 カナは自分が病気をしても自宅でのんびりするどころか、実家に戻って療養しなきゃいけないような環境で……。

 そんな風なのに、カナはそれでいいと言う。

 わたしがいいと言う。

 ……そう。

 カナは自分がかわいそうだなんて、多分、まったく思っていない。

 ああ、そうか。

 問題はカナではなくて、カナをかいわそうだと思った人が、何を持って「叶太くん、かわいそう」と言ったのか。

 ……やっぱり、わたしの事だよね。

 そう思う気持ちを止められない。
 だけど、えみちゃんはわたしに直接言った訳ではない。

 ああ、そうか。

 わたしは、また思う。

 これは、カナと付き合うことになった3年前、高校1年生の時と同じなんだ、と。

 あの時、わたしは、田尻さんの言葉を真に受けて、カナの気持ちを勝手に想像して動いてしまった。結果、わたしは死にかけて、カナには散々な遠回りをさせて、ようやくカナとわたしはお互いに想い合っていると知ることができた。

 あれ以来、わたしたちは何かあったらお互いに直接、話をすることにしている。

 ……相手はカナじゃないけど、きっと、これも同じことだ。直接話さなかったら、なにが真実かなんて分からないもの。