15年目の小さな試練

 高校生になってもそれは同じで……。更に体調も少しずつ悪くなっていき、入院や手術も増えて、勉強をどうのと気にする余裕もなくなっていった。

 それでも、いつだって不安は付きまとい、わたしは今も体調が許す限りの無理を自分に課す……。

 ……ああ、そうか。

 ……それがダメなのか。

 だけど、そう気が付いても、じゃあどうすれば良かったのかなんて、答えは出なかった。



    ☆    ☆    ☆



「……ル。……ハル、夕飯、来たよ」

 カナの声と優しく髪をなでられる感触に、ゆっくりと意識が今に戻る。

 のっそりと目を開けると、いつもは白っぽい病室が夕陽に染まっていた。

 その景色をぼんやり目にしながら、あれ? と思う。

 何かすごく楽しくない夢を見ていた気がする。だけど、どんな夢だったのか思い出せない。ただ、みぞおちの辺りに感じるもやもやした重いものが、嫌な夢の存在を教えてくれた。

 ああ、そうだ。

 とカナに呼ばれたことを思い出し、声がした方に顔を向けると、そこには、夕陽を受けて赤みがかったカナの笑顔があった。

 その柔らかな表情を目にすると、心のどこかにくすぶる苦い思いはスーッと溶けて消えていった。