15年目の小さな試練

「牧村、大丈夫か? 顔色が悪い」

 授業中、先生に声をかけられた。

 みんなと同じように、普通に授業を受けていただけなのに。なんで先生はわたしの顔色になんて気が付くのだろう?

 反射的に大丈夫だと思いつつも、心配そうな先生の表情に押されて身体の奥底を探ってみると、いつも以上に気だるさを感じる。
 今一つスッキリしない体調なのは確かだった。多分、先生が気にする程度には顔色が悪いのだろう。

 だけど、本当は自分で気付かない程度の体調の悪さなら、何とかなるんだ。だから、

「……大丈夫です」

 と返事をした。
 なのに、先生が真剣な表情でわたしの顔をのぞき込んで言葉を続けた。

「無理するな。勉強より身体のが大事だろ?」

 でも先生、今日のところは、来週の期末テストの範囲だから、真面目に聞くようにって……。

「広瀬!」

「はい!」

 だけど、反論する間もなくカナが呼ばれて、そのまま保健室に連行。

 自分一人が保健室に行くだけならまだしも、カナが授業を受ける邪魔をしてしまうのは、やっぱりものすごく嫌だった。

 カナは全く気にしない。それが分かっていても、罪悪感は拭えなかった。