「ハル、身体熱いよ。少し冷やそう?」

 取りあえず、氷枕。熱が高そうだったら、脇の下も冷やした方が良いかも知れない。
 だけど、ハルは小さな声で

「……寒いから、いい」

 と言う。
 寒気を感じる時は熱が上がる時。寒いのなら、冷やすより、あったかくしてあげた方が良い。

「まだ上がるかな」

 それなら、綿毛布でも出そうかと思っていると、ハルはオレの腕をキュッと握った。

「側にいて?」

 ……ダメだ。

 ハル、そんなこと言われたら、オレ、離れられないよ。

 ……うん。麺毛布よりオレの方があったかいよな?

 オレはもう一度、ハルを抱きしめなおし、ハルの頭をなで、背中をなでた。
 オレの腕の中でホッとしたように力を抜き、ほどなくハルの呼吸が寝息に変わった。



 明け方には、ハルの熱は上がり切ったようで、熱いと言うので身体を冷やし始めた。あわせて、呼吸も苦しそうだったから、酸素吸入も開始した。

「……カナ」

「うん。いるよ」

 ハルは寝苦しいのか、何度も目を覚まし、そしてオレを見つけるとホッとしたように、また眠りについた。

 こんな風に求められるのは、はじめてだ。嫌な夢でも見たのか、何か不安なことでもあるのか?

 布団の上に出た、ほっそりとした手を握り、頭をそっとなでる。
 髪の毛越しに触れた頭すら、怖いくらいに熱い。ハルの熱は39度を超えていた。

 土曜日の通院で、先生からは疲れが溜まっていると注意されていた。なのに、オレはハルが体調を崩すのを止められなかった。