15年目の小さな試練

「習熟度別の課題って、今年からなんでしょ? しかも4月の途中から突然始まった感じだし。そもそも、ハルちゃんだけだよね、そんな難しいのをもらってる子。

なんかさ、一歩間違えたらパワハラ?」

 柚希ちゃんが何だか過激な発言をする。

 けど、パワハラって、そういう意味だっけ?

「まあ、それは言い過ぎかも知れないけどさ、嫌だったら言った方がいいと思うよ」

 河野くんがわたしの目をしっかり見つめて、真顔で言った。

 何だか話がおかしな方向に向かっている。

「あの……でも、面白いから、大丈夫なの。心配してくれて、ありがとうね?」

 そう言うと、みんなは

「あれが面白いのか」

 とか

「信じられない」

 とか

「ハルちゃん、プラス思考だね~」

 とか口々に言い、笑った。

 そして、隣のカナがくしゃりとわたしの頭をなでてきた。

「あのね、楽しそうにやってるの分かってるけど、オレも心配。最近、寝る時間も遅くなってきてるだろ? 無理は禁物だよ?

本当はさ、もう充分に進んだんだから、オレたちが追いつくまで、ハルは課題なしにしてくれって交渉してもいいと思うんだよね」

「……それは嫌」

 そう言うと、

「ハルちゃん、もしかして勉強好き?」

 と河野くんが聞いてきた。

「うん」

 頷くと、なぜかみんなに笑われた。

 ……勉強、楽しいよね?

 困っていると、海堂くんが笑いながら、

「じゃ、さ、そろそろ続きやろうぜ」

 と声を上げてくれて、長かった休憩時間は終わり、課題の続きの議論が始まった。