オレの視線を受けて、ハルは困ったように小首を傾げた。

「えっと、……わたしが行きたくて選んだんだよ?」

 その表情に嘘がないのを感じつつも、「わたしが行きたい」の意味が「周りの意をくんで、自分で行こうと決めた」ではないか、そこのところをハルに確認するべきかどうか頭を悩ませていると、同じように何を言おうか考えていたらしいハルが口を開いた。

「あのね……、大学って、その先、自分が何をして生きていくのか、どんな仕事で生計を立てるのかを考えて、選ぶもの、だよね?」

 そう言って、ハルは不安げにオレの目を見た。

「ん、そう、かな?」

 本来、そうあるべきだと思う。だけど、そうやって将来を考えた上で大学や学部を選ぶ人は少なくて、偏差値で大学を選んでいる人も多いと聞く。

 うちの高校は大学付属で、多くはそのまま杜蔵学園大学へ進学する。だけど、成績順で学部を選ぶため、誰もが希望の学部に行ける訳ではない。だから、取りあえず入れるところに進学するってヤツも結構いる。

「だからね、本当なら、わたしは情報系を選んだ方がいいのかな、って思ったんだよ?」

 ハルは困ったように眉尻を下げた。

「え!? ハル、情報学部を考えてたの?」

 オレは思わず大きな声を上げてしまった。

 ハルは電子機器が苦手だ。操作がダメなのではなく、ブルーライトや電子音だとかの物理的な刺激が辛いらしい。普段は好きじゃない程度なのが、体調が悪いとメールの確認もしんどいと言う。

 そんなハルが情報学部を考えていたと聞いたら、そりゃ驚くだろう。

「ううん。違うよ。……ただ、本当なら、お家で仕事できそうだし、そういうお勉強をするのがいいんだろうなって思っただけ」

「あー。だよねー?」

 思わず、ふぅーっと息を吐く。

 電子機器の問題がなければ、システム設計とかプログラミングとかそう言うの、きっと頭が良いハルには得意分野だろうなとも思うのだけど。

 でも、勉強してるだけで、体調の悪化を誘いそうなものはダメだよな。