夕方、急いで家に帰ると、ハルが玄関まで出てきてくれた。

「お帰りなさい」

 にっこり笑ってオレを出迎えてくれたハルは、思ったより元気そうだった。

「ただいま。ハル、起きてて大丈夫?」

「うん。お昼過ぎには熱、下がったよ」

 その情報は沙代さんからもらっていたけど、ハルの顔を見るまで安心は出来なかった。

 だけど、この様子なら、明日は学校にも行けるかも知れない。

 その場でハルを抱きしめようと手を伸ばしてから、手洗いうがいの後の方が良いだろうと思い出し、しぶしぶ腕を引っ込めた。
 それを見て、ハルはくすりと笑った。

 だけど、ハル、笑い事じゃないからね?

「先に、手洗うね」

 特に風邪も変な病気も流行ってないけど、オレはちょうど一ヶ月前、感染源が分からない季節はずれのインフルエンザを拾ったばっかりなんだから。
 世の中には、どんな病原菌が潜んでいるか分かったものじゃない。

「ん。待ってるね?」

 ハルは洗面所に向かうオレの後を付いてきながら、嬉しそうに微笑んでくれた。

 およそ八時間ぶりのハル。

 穏やかな笑みを浮かべるハルは、相変わらず文句なしに可愛かった。

 ああ、今すぐ抱きしめてキスしたい!

 はやる心を押し殺しながら、丁寧に手洗いとうがいを済ませ、ハルを抱きしめハルの感触をしっかり堪能した後、荷物を置きに寝室に入ったところで思い出した。

「あ、そうだ。山野先生にハルの課題、提出してきたよ」

「ありがとう!」

「で、さ、……次の課題を預かったんだけど」