担任がいない、決まった教室がない、そんな状態でハードな課題がたくさん出て、更に放課後にもグループでの活動が出てくるかも知れないとか。そんな心身に大きな負担がありそうな状況に、ハルを一人で放り込める訳がない。

 と言う訳で、班活動が中心となるこの授業で、約束通り学校側はさり気なく(はないかも知れないけど)オレたちを同じ班にしてくれていた。

「ハルちゃんいないと、今日の課題、結構大変かも?」

「何気に、ハルちゃんすごいよな」

「そうそう。自己主張とか全然しないのに、不意に核心を突いた一言が出てきて、一瞬で場の空気変わるよね」

 今井が心底感心しているという感じで海堂に話しかける。

 そうなんだ。

 これまでも常々、ハルは頭がいいと思っていた。だけど、どうやらハルの頭脳は、ただ成績がいいというような頭の良さだけじゃないらしい。大学入学以来、それをまざまざと見せつけられている。

「あれ、ハルちゃんは?」

 本城柚希(ほんじょうゆずき)と河野亮也(かわのりょうや)が連れ立って到着。ハルを除いた全員が集合した。

「ハルは熱出ちゃって、今日はお休み」

「そっか、一人で大丈夫?」

「……ん? ああ、家に人いるから大丈夫」

 そう言えば、プライベートな話はほぼしていない事を思い出す。

 仮にハル以外、家に誰もいないような状態だったら、オレは絶対、学校になんて来ていない。大学から一緒になったヤツらが、そんなことを知るはずもないけど。

「お母さんか誰かに来てもらってるの?」

 ……ん?

 ああ、ハルとオレの二人で暮らしてると思ってるのか。

「いや、」

 と続けようとしたところで、先生が助手数名伴って入室し、オレたちの雑談も終了した。



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