海堂はハル本人がいるところでは「ハルちゃん」と呼ぶけど、オレしかいないところでは「奥さん」と言う。

 グループワークが始まった最初の頃、「奥さん」という言葉にオレはムチャクチャ嬉しそうな顔をしていたらしく、それ以来、半分からかいを込めて言われている。からかい半分と言っても、オレが嫌がるどころか喜んでるので、全くからかいになっていないのは、お互いに承知の上。

「うん。少し熱があって。ごめんね、今日はオレだけで」

「あ、いや。それは全然平気」

 別の島でおしゃべりに興じていた今井美香も戻ってくる。

「ハルちゃん、今日お休み? 大丈夫?」

 山野先生の授業も他の授業もちょくちょく欠席や早退をしているハルは、既に身体が弱いらしいと認識されていた。

「熱出したんだけど、そんな高くないから大丈夫。心配してくれてありがとね」

 班のメンバーは前期固定で、後期にまた新しいメンバーになるらしい。男女三人ずつの六人班。

 ちなみに自由に班を決められる訳じゃなかったけど、夫婦関係にあるオレがハルと一緒の班にいるのには、もちろん理由がある。

 ハルには持病があるから、オレが側にいた方がいいとか、休みが多くなるだろうから内容を共有しやすいようにとか、大学に伝えた建前は色々あるけど、早い話、今年のお願い事項がそれだった訳だ。

 結婚までしておいて、いつまでも親父やお義父さんに頼っている訳にはいかないだろうと、今年はオレ名義でも結構な額の寄付をさせてもらった。

 ハルは嫌がるだろうけど、強行した。と言うか、ハルには事後承諾。