「持ち上がりの子たち、すごく可愛いし、カッコいいね~」

 わたしが鞄からテキストやノートを出していると、えみちゃんが声をかけてくる。

 えみちゃんは授業の準備はしなくて良いのかな?

 わたしが答える前に、えみちゃんはおしゃべりを続けた。

「やっぱさ、着てるものとか持ってるものとか違うよね」

 ……そうかな?

 みんなが着ていた服とか、持っているものとか、まるで思い出せない。

 久しぶりのおしゃべりとか、あのザワザワしたあったかい空気感とか、そう言うのを感じるので精一杯だったもの。

 でも、3月までは制服だったし、私服になったのは大学に入ってからだから、もしかしたら、みんな新しい服に新しい鞄なのかもしれない。

「ハルちゃんの鞄はどこのブランド? 見たことないんだけど」

「……え? これ?」

「そう。なんかすごく高そうだよね」

 心なしか、えみちゃんの目が輝いている気がする。

 そういう話が好きな女の子、多いよね。でも、わたしはその手の話は疎くて、聞かれても困ってしまう。

 薄い茶色のシックなデザインの鞄は、革製なのだけど、とても軽くて使いやすい。重い教科書を入れても型くずれしないし。
 そう言う視点しか頭になかったから、ブランドとか、考えたこともなかった。

「えっと、おばあちゃんがプレゼントしてくれたのだけど、どこのとかは……」

 えみちゃんはまだ何か言おうとしたけど、それを遮るように、カナが声をかけてくれた。

「ハル、先生入ってきたよ」

「あ、うん。ありがとう」

 カナの言葉を受けて、慌ててノートと教科書を開き、シャーペンを取り出す。