「珍しい。ハルちゃんが恥ずかしがってない?」

「わ、さすが結婚して一年近く経つと違うね!」

「大学生になったし、色々変わるよな~」

「ハルちゃん、どう? 叶太、優しくしてくれる?」

「ちょっと、あんた、それセクハラ!」

「おい待てよ、そういう意味で言った訳じゃっ!」

 浴びせかけられるそんな言葉に、みんなが何を言っているのか遅れて理解し、今度こそ羞恥心が沸き上がってきて、頬がポッと熱くなる。わたしは慌てて両手で顔を覆ってうつむいた。

 ……もうやだぁ。

 カナはそんなわたしの頭をそっと抱え込んで、キスを落とすものだから……。

 わたしたちを囲む元クラスメイトたちは歓声を上げ、からかいの声が飛び交い、わたしはとうとう真っ赤になって机に突っ伏した。



「すごい賑やかだったね。高等部から持ち上がりの子たち?」

 3限の授業を終えて、次の講義のクラスに入ると声をかけてきたのは、上尾えみちゃんだった。

 5月、カナがお休みの時に一度、晃太くんも一緒にお昼を食べた。それ以来、すれ違う時に挨拶するくらいの仲だったけど、えみちゃんには他にもたくさん友だちがいるみたいだし、わたしの隣にはいつもカナがいたから気にはしていなかった。

「うん。うるさくてごめんね」

 そう言えば、えみちゃんもあの講義を取っていたのだと思い出す。

「ううん! 授業始まる前だったし、ぜんぜん大丈夫」

 カナに促されて空いてる席に着くと、えみちゃんは、

「隣、いい?」

 と、わたしの返事を聞くことなく、カナとは反対の隣の席に座った。