「お前はハルちゃん一筋で、よそ見なんて一回もしてないだろうし、ハルちゃんと別れるなんて考えたこともないだろうけど」

「ああ、うん、そりゃもちろん」

 オレがそう言うと、兄貴はぷっと吹き出した。

「うん、そうだろうな。だから、別れたって聞いて動揺するんだろうけど、世の中ではよくあることだからな?」

「……そう、かも?」

 確かに周りではそう言う話もよく聞く。
 兄貴にしても、今までにも何人も彼女が変わっているのは知っていた。

「そうそう」

「でも、今回のは、オレのせい……だよね?」

 兄貴は小さくため息を吐いた。

 ごめん。やっぱり、ここ、突っ込んじゃダメなところ?
 もしかして、オレ、空気読めてない?

「確かに、きっかけ、にはなったね」

 兄貴は、それから思いもよらないことを口にした。

「俺さ、お前のハルちゃんへの一途な思いを、十年以上、同じ家で見続けて来たんだよな」

「……あー、うん」

 実家に住んでいた頃、オレがハルの話をするのはいつもの事だった。兄貴にはハルとの関係に悩んで相談した事もあるくらいだ。多分、親父やお袋より、兄貴が一番オレの熱い想いを知っているだろう。

「お前はハルちゃんが好きで好きで仕方なくて、いつもハルちゃんを一番に思っていて、自分よりもハルちゃんを優先していて。……その深い愛を目の当たりにして、いつもすごいなと思ってたんだ」

「そ、そう?」

 照れるじゃないか、兄貴!