兄貴は、あんまり知らないよな。過去、何度もハルは頭がいいと言ってきたけど、五歳も離れていたら、その頭の良さに触れることはなかっただろう。

「ハル、本当に頭いいだろ?」

「ああ。……明仁を思い出したよ。ハルちゃん、おっとりしてるし、全然違うタイプだと思ってたんだけど」

「明兄も、バカみたいに頭いいよね」

 オレの言葉に兄貴は吹き出した。

「お前、バカみたいに頭いいって、日本語おかしいだろ!」

 面白そうに笑いながら、兄貴は言う。

 確かに。

 思わず、オレも笑ってしまった。

「まあ、ハルちゃんが楽しければいいんだけどさ」

「うん。ありがとう。気を付けて見ておくね。……っても、ハルがやってる内容、実はよく分からないんだけど」

 オレの言葉に兄貴はまた笑う。

「そりゃそうだ。三年か四年になる頃に理解できれば十分だよ」

「うん。……ホント、なんか最近、兄貴に頼ってばっかりだよね。本当にありがとう」

 そこでふと心配になって、聞いてみる。

「あのさ……彼女さん、怒ってない? GW明けは一週間、毎日ハルの付き添い頼んじゃったし、その後も水曜日ごとに放課後付き合わせて」

 オレの言葉に兄貴はこともなげに答えた。

「ああ、今、フリーだから大丈夫」

「……え?」

 ちょっと待って!?

「兄貴、彼女いたよね!?」

「ああ、いたけど、別れた」

「別れた!? いつ!?」

「叶太、声大きすぎ」

 スマホを顔から離したのか、兄貴の声が少し遠ざかった。