15年目の小さな試練

 出入り口の辺りはクラス別に人だかりができている。

「陽菜が泣くと、わたしも泣けて来ちゃうよ~」

 そう言って、ポロリと涙をこぼす志穂。

「ハルちゃ~ん、大学入っても仲良くしてね~!」

 ハルを中心に、みんな同じ大学(しかも隣の敷地)に行くのに半べそな女子たち。
 それを見て、

「お前、泣ける?」

「いや。まあ、寂しくはあるけど」

 なんて生温かく見守る男子たち。

「とにかく、記念写真撮ろうぜ」

「そうそう。部活の後輩たちも待ってるし、解散前に写真撮ろう」

「おーい、3の3、集合~!」

 委員長が上げた声に、みんながあの木の下で撮ろうとか、やっぱ校舎をバックだろうとか盛り上がる。
 オレは女子の中心に割って入ってハルを迎えに行く。

「ハール、写真撮るよ」

「……カナ」

「あー。ハル、目、真っ赤」

 ハルの目にはまだ大粒の涙が盛り上がっていた。オレはポケットからハンカチを取り出して、その涙を拭う。

「ありが、とう」

 そう言いながらも、拭った端から涙があふれ出す。

「牧村夫妻、ほら早く真ん中入って~!」

 志穂の呼び声に周りが吹き出す。

「なんだよ、夫妻って」

 思わず笑いながら返すと、志穂がからかうように言った。

「何も間違ってないじゃん。それとも、なに、もう陽菜に捨てられそう? 夫婦はおしまい?」

「なわけないでしょ? ねえ、ハル」

 周りのテンポに付いていけずにぽかんとしているハルの肩を抱き、言われるままに真ん中に入る。
 ハルを挟んで反対側の隣には、ちゃっかり志穂が収まっていた。

「陽菜、気合いで笑うよ?」

 と志穂がハルの背をポンポンと叩くと、ハルはこくりと頷いて、手にしたハンカチで涙をぬぐった。