だけど、晃太くんは気にする様子もなく、ピアノの蓋を閉めながら、

「とっても上手だったよ。ちょっと驚いた。ハルちゃん、ホント筋が良いよ」

 と、またしても褒めてくれた。

「まさか!」

 即座に返したわたしの言葉に、晃太くんは笑いながら、

「あれ? 先生の言うことを疑うの?」

 と言う。

 慌てて、左右に首を振って、

「そんなこと! ……ない、けど」

 と前言を撤回……したんだかしないんだか、という微妙な言葉を口にすると、晃太くんはクスクスと楽しそうに笑った。

「本当に上手だよ。自信持っていい」

 改めて晃太くんはそう言って、わたしの頭をポンポンと優しく叩いた。

 ……そっか。
 もしかして、初めての割には上手って意味かな。

 そう思うと、誉め言葉をありがたく受け取ることができた。

 6歳で習った時と違って、今は楽譜は読めるし鍵盤ハーモニカやリコーダーの経験はある。小さな子が初めて習うのに比べたら、少しばかり上手なのは当たり前だ。

「……ありがとう」

 小声でお礼を言うと、晃太くんはにこりと笑った。

「じゃ、続きは来週に。もし、次回までに弾くことがあったら、先に進んでも良いし、今日のところを弾いても良いよ」

 4ページの曲で、今日は最初の2ページを教えてもらった。宿題は今日のところの復習で、残り2ページは次回に教えてもらうのかと思ったら、晃太くんはわたしの好きにしていいと言う。

 だけど次の瞬間、晃太くんは

「あ、もちろん、無理に練習する必要はないからね? 弾きたければ、ってことだよ」

 と言葉を続けた。