明仁に連れられてうちに初めて遊びに来た時のハルちゃんの事、よく覚えている。
春に入院したハルちゃんが退院したのは秋。幼稚園に行けるようになったのは冬に入った頃だった。その頃、叶太が執拗に誘ったらしく、ハルちゃんは初めてうちに遊びに来た。
すぐ隣の家なのに、ローズピンクのコートにおそろいの帽子、もこもこブーツで完全装備のハルちゃんは、明仁に抱っこされていた。
何事もそつなくこなし、何事にも興味の薄そうな明仁が、妹の付き添いにやって来るというのにも驚いたけど、それより何より、ハルちゃんに向ける優しい視線に驚いた。
「こんにちは。お邪魔します」
礼儀正しくお辞儀をした明仁。その腕の中のハルちゃんも、明仁と同じように、
「こんにちは」
と笑顔を見せると、ぺこりと頭を下げた。
「いらっしゃい! さあ、上がって上がって」
お袋が明仁からハルちゃんを受け取り、玄関に座らせると、明仁がブーツや帽子を脱がせる。決して嫌々ではなく、心の底からの笑顔を見せながら、ハルちゃんの世話をする明仁の姿を見て、俺は衝撃を受けた。学校で見る明仁とは、まるで別人だったから。
「ハルちゃん、こっちおいでよ!」
叶太がコートまで脱がされたハルちゃんの手を引こうとすると、明仁が
「陽菜は、まだあんまり歩けないから」
と遮り、またハルちゃんを抱き上げた。
「じゃあ、こっち来て!」
叶太は臆することなく、明仁の服の裾を引いた。
それから、俺を振り返って言った。
「兄ちゃん、ピアノ弾いてね!」
春に入院したハルちゃんが退院したのは秋。幼稚園に行けるようになったのは冬に入った頃だった。その頃、叶太が執拗に誘ったらしく、ハルちゃんは初めてうちに遊びに来た。
すぐ隣の家なのに、ローズピンクのコートにおそろいの帽子、もこもこブーツで完全装備のハルちゃんは、明仁に抱っこされていた。
何事もそつなくこなし、何事にも興味の薄そうな明仁が、妹の付き添いにやって来るというのにも驚いたけど、それより何より、ハルちゃんに向ける優しい視線に驚いた。
「こんにちは。お邪魔します」
礼儀正しくお辞儀をした明仁。その腕の中のハルちゃんも、明仁と同じように、
「こんにちは」
と笑顔を見せると、ぺこりと頭を下げた。
「いらっしゃい! さあ、上がって上がって」
お袋が明仁からハルちゃんを受け取り、玄関に座らせると、明仁がブーツや帽子を脱がせる。決して嫌々ではなく、心の底からの笑顔を見せながら、ハルちゃんの世話をする明仁の姿を見て、俺は衝撃を受けた。学校で見る明仁とは、まるで別人だったから。
「ハルちゃん、こっちおいでよ!」
叶太がコートまで脱がされたハルちゃんの手を引こうとすると、明仁が
「陽菜は、まだあんまり歩けないから」
と遮り、またハルちゃんを抱き上げた。
「じゃあ、こっち来て!」
叶太は臆することなく、明仁の服の裾を引いた。
それから、俺を振り返って言った。
「兄ちゃん、ピアノ弾いてね!」



