困った、どう収めようと思っていると、ハルちゃんがクスクス笑いだした。

「ありがとう、晃太くん。わたし、カナの気持ち、ちゃんと分かってるよ。鬱陶しいとか思っている訳じゃないの」

「えーっと。……そっか、それなら良かった」

 楽しそうにひとしきり笑った後、ハルちゃんは静かにほほ笑んだ。

「ただ、申し訳ないなって思ってるだけなの。……晃太くん、巻き込んじゃってごめんね」

「いや、俺のことは気にしないでいいよ」

 そこでふと思いついた。

 ポッと降ってきたものを頭の中で反芻する。
 うん。悪くない。

「ね、ハルちゃん、ピアノ弾いてみる?」

「え?」

 突然、脈絡もなく飛び出した言葉に、ハルちゃんは小首を傾げた。

「ピアノ。教えてあげようか、毎週水曜日」

「……晃太くん?」

 ハルちゃんはやっぱり、俺の言った言葉の意味が分からないみたいで、大きな目を瞬いた。

 だけど、俺が、

「この前、楽しくなかった?」

 と聞くと、パアッと表情を明るくして、

「楽しかった! すっごく楽しかった!」

 と両手を合わせて笑顔を見せてくれる。

「ハルちゃん、ピアノ、好きだよね」

 カエルの歌の輪唱、あんな簡単な曲でも音楽を楽しむという目的は十分に果たせるのだから、面白い。

「うん。好き! 晃太くんのピアノを始めて聴かせてもらった日から、大好き!」

 目を輝かせてそう言ってくれるハルちゃんに、なんだか胸が熱くなる。

「ありがとう」

 お礼を言いつつ、もう一度、伝える。