「カナにね、少しでも、自分のことだけ考える時間を増やして欲しいなって思うの。

せっかくだから練習だって、最後まで参加してって欲しいし。夜だって、そのままお友だちとご飯食べに行ってきてもいいと思うし」

 独占欲の塊のような女なら見たことがあるけど、ハルちゃんはその真逆。なんだか、すごく新鮮だった。

 まあ、その根っこには元々、叶太がハルちゃんに張り付いて離れないという事情があるのだろうけど。

 そして、ふと浮かんだ言葉を俺は思わず口にしてしまった。

「ハルちゃんはさ、叶太が鬱陶しいと思うこととかあるの? あいつ、四六時中、ハルちゃから離れないけど」

 最初、ハルちゃんは何を聞かれたのか分からないという顔をし、次の瞬間、俺の言葉の意味を理解して、大きな目をまん丸に見開いた。

「まさか!」

 ハルちゃんは何度か瞬きしてから、とても困ったような顔をして言った。

「……あのね、カナがイヤで言ってるんじゃないんだよ?」

「ごめんごめん。大丈夫。分かってるから」

 笑いながら答えると、ハルちゃんはホッとしたように表情をゆるめた。

「ただ、普通に考えて、あいつのあれは行き過ぎと言うか、やり過ぎと言うか……うん、もしオレがハルちゃんの立場だったら、逃げ出したいって言うか……あ、いや、」

 ごめん、叶太。

 なんか言葉を選び間違えた! ってか、口が滑った!

 けどホント、付き合ってる女の子が叶太みたいな感じだったら……正直、耐えられない。

 いや、そうじゃなくて、ここはフォローだろ、俺!