15年目の小さな試練

 その日、家に帰ってから、ハルに聞いてみた。

「ところで、ハルは、なんで空手の練習なんて見たかったの?」

「だって……」

 とハルは少し困ったようにオレを見て、それから少しばかり頬を染めて、そっと目を伏せた。

「だって、大切な旦那さまが、ずっと続けてきたもの……でしょう?」

 え? ハル、今、何て言った!?

 大切な旦那さま!! って言ったよね!?

 その言葉に思わず、ハルを凝視する。

 口下手なハルからもらった思いがけない言葉に、オレの気持ちは一気に浮上。
 ハルは恥ずかしそうに、そんな受かれたオレの顔を見る。

「なのにね、わたし、カナが空手をするところ、一度も見たことないなって思ったら、ちゃんと見たくなって……」

 気が付くと、オレはハルをギュッと抱きしめていた。

 ハルの髪に顔をうずめて、片手で髪をもてあそび、もう片方の手でハルの薄い背をゆっくりとさする。ハルの髪からはラベンダーの香りがふわりと漂う。

 ああ、久しぶり。この感じ。

 ……幸せだ。

「そうだね。道場の方は結構、激しい組み手とかもあるけど、大学の方だったら、ハルが驚くような事はなさそうかな」

 有段者が淳しかいないところに教えに行くくらいなら、ハルの心臓がどうこうするような事はきっとないだろう。
 うん。そう思うと、淳が持ってきた話もそう悪くないのかも知れない。

 ……一回限りで済むのなら。

 ああ、でも、やっぱり心配だ。

 何があるか分からないし、同じ場所にいたとしても練習中はオレ、ハルの側にいられないし。

 ……水曜日の夕方は兄貴を頼もう。

 うん。そうしよう。