「あの、ね……カナ、話してて大丈夫だよ? えっと、わたし、先にお弁当食べてるし」

 と言うと、ハルはオレの返事を待たずに、淳に声をかけた。

「わたし、食べるのがとっても遅いから、カナ、心配してるんだと思うの。でも、カナだけなら、まだ時間いっぱいあるし、しゃべってて大丈夫だと思う」

「ハールー」

 ハルの気遣いは嬉しいけど、それに関しては、オレ、話す必要を感じてないからね?

 だけど、淳はハルの言葉を真に受けて、ハルに満面の笑顔を返す。

「ハルちゃん、ありがとうね? 本当にいい?」

「うん」

 そう言って淳に微笑みかけた後、ハルはオレの方をじっと見つめる。

 その目が、ちゃんと聞かなきゃダメじゃないと言っているようで、オレは言葉に詰まる。
 それでもオレが何も言わずにいると、

「きっと、何か事情があるんじゃないかな?」

 と言って、ハルは小首を傾げて悲し気にオレを見た。

 友だちだったり、人間関係だったりをとても大切にするハル。オレの十年来の友人である淳への気配りも万全だ。

 本当に、久しぶりのハルとのランチタイムにとんだ乱入者だよ。

 いや、ただ一緒に食べるだけなら別に良い。ハルとは朝食も一緒に取ったし、夕飯だって一緒だ。
 だけど、ハルを放置して、既に一ヶ月以上前に終わった話を再度するとか、あり得ないし。オレが聞く耳持たなくったって、仕方なくない?

 だけど、ハルの悲しそうな顔を見て、オレがハルの望まない言動を取れるはずはない。だから結局、淳の話は聞くことになってしまう訳で……。

「ああもう、……食べながら聞くだけだぞ?」

「ありがとう!」

 淳は嬉しそうに笑って言いながら、

「俺も食べていい?」

 とリュックから、でかい弁当箱を取り出した。