15年目の小さな試練

「……でも、いつまでも、誰かに頼りっぱなしってことはないよね? 本当は自分でやるものでしょう?」

「まあ…そうかも」

 カナの心配性は病み上がりなのに健在だった。と言うか、長く会えないせいで、一緒にいた時よりも心配性がひどくなっている気がして、どうすればいいのか、本当に困る。

 何より、こんなに、わたしの事ばっかり考えていたら、またカナが疲れ切って、病気を拾ってくるんじゃないかと気になって仕方ない。

「あのね、わたし、もう結構、入力も早くなったんだよ?」

「ん?」

「もう、何も見なくても打てるし、ソフトだって参考書なしに使えるよ?」

「この一週間で?」

「うん。えっと……まだまだ、カナみたいにはできないのだけど」

 早くなったとは思う、自分なりに。
 だけど、もちろん、カナみたいにあっという間に文章ができちゃうようなスピードはない。

「カナはすごいよね」

 わたしがそう言うと、カナは少し戸惑ったように返事をくれた。

「そう?」

「ね、カナは、どうやってできるようになったの?」

「ん? 小学生の頃、兄貴がパソコン使うのが面白くて見てたら、親父がタイピングソフトの入ったパソコン貸してくれて、それからかな?」

「小学生の頃から!?」

 それは、敵わないはずだ。

「うん。シューティングゲームのタイピングソフトだったから、兄貴に勝ちたくって、ムチャクチャ練習した!」

 カナは笑う。

「そっか、そんな昔から使ってたんだね」

「うん。うちはテレビゲームみたいなの、一切禁止だったから、ホントはまったよ」

 楽しそうな笑顔のカナを見ていると、わたしもほっこり幸せを感じる。