「ハル、今日はベッドにいよう? あったかくして、布団に入ってて? もう8時だし、今日はこのまま寝るといいよ」

「えっと……わたし、今日の昼間、寝てばかりいたんだけど」

 パソコン開くったって、同じ部屋にあるのだし。

「だけど、まだ眠れるでしょう?」

「……うん」

 眠れるかと言われたら、きっと、布団をかぶって電気を消したら、すぐに眠れる気がする。だけど、起きていようと思ったら、まだちゃんと起きていられるとも思うのだけど……。さっきまで教科書読んで勉強していたくらいだから。

「今、ベッド?」

「うん。教科書読んでた」

「教科書!?」

 カナが驚いたように言った。

「昨日の4限目、授業受けられなかったから、読んでおこうと思って」

「……昨日の4限って、統計学だったよね?」

「うん」

「ハル、統計学の授業なんて、今更受けなくても大丈夫じゃない?」

「まさか。そんな事ないよー」


 大学での勉強には、高校までの知識とは比べ物にならないくらい、色んな事が詰まっている。と言っても、どの教科もまだ入り口のお話なのだろうけど。

「教科書読んだら、理解できる?」

「うん。一応」

「……そっか。でも、もう遅いから、この後は寝てね?」

「じゃあ、そうしようかな」

 わたしがそう言うと、カナはホッとしたように

「そうして、そうして」

 と言った。

「後少しだね」

「うん。……月曜日、だよね?」

「うん。月曜日。……長かったなぁ~」

 カナがしみじみと言う。

 うん。本当に長かった。
 一週間、丸々カナに会えないなんて、普通じゃ考えられないもの。

 結婚してからは、入院していても一緒に過ごしていたし、ICUに入っていたって、カナは毎日何度も面会に来てくれるから。

「後、一日だね」

「ああ。後、一日でハルに会える」