ストレッチをして、家の近所を走り込み、軽く空手の基礎練習をする。小一時間ほど身体を動かしてから寝室に戻る。

 シャワーを浴びて汗を流すと7時前。

「ハル、おはよう。朝だよ」

 カーテンを開けて朝の光を取り入れ、ハルを起こしつつ寝起きのハルをたっぷり堪能する大好きな日課。

「ハール」

 ベッドに座ってハルの頭をそっとなでる。

「……ん」

 まだ起きたくないとでも言うように、ハルは目をつむったまま布団を引き上げようと手を動かす。

 可愛いなぁ。

 そう思いながら、ハルの額にキスを落とす。

「今日は卒業式だよ。そろそろ起きよう?」

 決して無理には起こさない。だけど、ゆっくりと布団を二の腕辺りまで下ろし、頬をなで、髪に手を触れ、キスをし、ハルの意識を覚醒に導く。

「……カ…ナ?」

 ハルがうっすら目を開ける。

「うん。オレ」

「……おはよう」

「おはよう!」

 まだ眠そうなハルに満面の笑顔を向けると、ハルもふわっと優しい微笑みを見せてくれる。
 こんな瞬間、オレはまた全身が幸福感に満たされて、兄貴が言うところの『ゆるみきった笑顔』になってしまう。

 ハルに部屋着を手渡し、ハルが脱いだパジャマを畳みつつ着替えもさり気なく手伝う。自分でできるよと最初は戸惑っていたハルも今では何も言わずに任せてくれる。



 ハルと一緒に朝食をとる。
 いつもと同じ朝。
 だけど、いつもと違って、今日はお義父さんとお義母さんも同席している。オレたちの卒業式に参列するために、二人とも仕事は休み。

 忙しい中、無理して休みを取ったのか、お義母さんは眠そうに欠伸をしている。お義父さんは満面の笑みでハルに話しかけている。

 ハルは決してたくさんは食べないけど、元気な時に食べるくらいの量は食べられている。抜けるように白い肌はいつも通りだけど、今朝は頬にも赤みがある。

 本当に良かった。

 ハルは元気だ。

 これなら、ちゃんと卒業式に参列できる。