だけど、オレの言葉にハルは微妙な表情を返す。

「……休む前提?」

 休まないなんて、きっとあり得ない。
 だけど、確かに、失言だった。

「ごめん」

「いいけど、さ。……休まず通えるかって言ったら、どう考えても無理だし」

 去年の手術後、ハルの体調は大分良くなった。もちろん、心臓が治った訳でも体力が劇的に上がった訳でもない。ただ、そう、前より少し身体が楽そうに見える。寝込む日数が少し減った。

 だけど、新しい環境に気疲れもするだろうし、高校時代よりも多くなるらしい課題に翻弄されて、体調を崩す日もあるだろう。そもそも、暑さも寒さもハルの身体には負担が大きく、季節の変わり目にも必ず体調を崩す。

 ハルだって、それはよく分かっている。

「……出席日数って厳しいのかなぁ」

 憂鬱そうに曇ったハルの顔を見て、オレは申し訳なくて仕方なくなる。

 こんな話するんじゃなかった。

 だけど、ハルは不意に真顔になって、ポツリと言った。

「……勉強、しよ」

「ん? ハル?」

「お休みしても遅れないように、とりあえず、経営学の勉強しておくね」

 ハルはそう言うと、少し安心したようにオレに笑いかけた。

「……えーっと?」

 なんて言うか、この勤勉さと生真面目さが、あの成績の要因の一つであることは間違いないと、オレは改めて実感。

 けど、そもそも大学入学前に、専攻科目の勉強って始めるもんなんだろうか?

 そうは思いつつも、満足げなハルを見ると、あえて止める必要など感じられず、オレはハルをそっと抱きしめた。

「ハルはホント努力家だな。……けど、無理だけはしないでね?」