「えっ!? ハル、なんで!?」

 それは、付属大学の学部を選ぶ最終希望を出す直前のこと。
 オレはハルの書いた希望シートを手に取って、マジマジと見つめた。

 第一希望 経営学部経営学科。

 見間違いじゃない。
 しかも、既にボールペンで記入されている。ちなみに、オレの方はハルのを写す予定だったから白紙のままだ。

「……なにか、変だった?」

 ハルは不安げにオレの手元にある、自分が書いた希望シートを覗き込む。


 第一希望 経営学部経営学科

 第二希望 経営学部グローバル経営学科

 第三希望 心理学部社会心理学科

 第四希望 心理学部コミュニケーション学科

 第五希望 法学部法律学科


「あ、いや……えーっと」

 変かどうかと聞かれたら、何も変ではない。どれも、実際に杜蔵学園大学にあるものばかりだ。
 敢えて言うなら、ハルの成績なら、どこを希望しても通るはずだから、第二希望以下は書く意味ないよねってくらいで。

 ハルは言いよどんだままに止まったオレの言葉を待つ。何と言うべきなのか悩んだ挙げ句、オレはハルの目をじっと見つめて、静かに言葉を紡いだ。

「ハルが行きたい学部で、いいんだよ?」

 ハルが選んだのは経営学部。
 そこは、親父や、多分お義父さんがオレを入れたがっていたであろう学部なんだ。
 親父にもお義父さんにも、絶対に口を出すなとくぎを刺しておいたけど、こっそりハルに話をしていないという保証はない。