夜明け3秒前

朝ごはんを食べた後、部屋に戻って、出発する支度をする。
服を着替えて、荷物を整理して……


あれもこれもと準備していると、あっという間に時間がくる。
流川くんとチェックアウトし、また電車に乗った。


今日はいよいよコテージだ。
流川くんのお祖父さんとも会うことになる。


どんな人だろう、いや絶対いい人だろうけれど……!
それでも緊張する、失礼なことをしてしまわないように気を付けないと。


ブーっと携帯が鳴る。
見てみると、麻妃からだった。


『おはよ。昨日、流川に何もされなかった?』


質素な文章だけれど、彼女が心配してくれているとわかって嬉しくなる。

きっと麻妃も、流川くんがそんなことするような人じゃないっていうのはわかっているんだろうけれど、聞かずにはいられないんだろうな。


『おはよう!大丈夫だよ、ありがとう』


返事を送ると、またすぐに返ってくる。


『ならいいけど。ちなみに今はコテージにいるの?』

『ううん!今電車に乗って向かってるところだよ』


ぽんぽんと会話が続く。
彼女と会えていない日はそんなに長くないのに、こうしていると会いたくなるなあ……


「メール、友利から?」
「うん、なんでわかったの?」


久しぶりに彼がエスパーの能力を発揮して驚く。


「嬉しそうな顔してたから」
「えっ、ほんと!?」


確かに嬉しかったけれど、よく気づけるなあ……
こういう些細なところも気づくことができるのは、彼がモテる理由の1つだったりするのかな。


「ねえ、そういうのってどうしたらわかるの?」

「うーん、どうしたらって聞かれるとわかんないなあ」


彼は少し悩んで、困ったように笑う。
もし理由を知ることができたら、私も人の気持ちを理解できるようになるかな、なんて考えたけれどダメか。

やっぱり、自分でもっと努力しなくちゃな。