夜明け3秒前

優しい光で目が覚めた。自分の部屋じゃない天井。
うーん、と体を伸ばしながら時計を見る。


8時……8時!?
その瞬間、一気に覚醒して携帯を開ける。


流川くんと約束していた時間が8時なのに、遅刻だ……!


前にもこんなことあったなと思いながら電話をかけると、彼はすぐに出てくれた。


『もしもし、おはよう凛月』

「お、おはよう!そうじゃなくて、ごめんなさい!さっき起きたところで……!」


焦っている私とは逆に、落ち着いている流川くんにペースを乱されながら話す。
すると、彼が電話の向こうで笑っている声が聞こえる。


『そっかそっか、いいよ。慣れないことばっかりで疲れてたんだろ』

「うう、そうかも……ごめんね、5分で用意するから、ちょっとだけ待ってて!」

『わかった。でもそんな焦んないでいいよ、ゆっくりで』

「うん、ありがとう!」


それだけ言って電話を切る。
彼は、優しいからあんな風に言ってくれたけれど、急がなくちゃ。


最低限身だしなみを整えると、扉を開けて部屋を出る。
流川くんは、扉によりかかって待ってくれていた。


昨日、お風呂から上がった格好のままなのか、浴衣だ。
いつもは見ることがない服だから、目を惹かれてしまう。


「おはよう凛月。浴衣似合うね」


なんてことないような口ぶりで褒められて、ドキッと焦る。

本当は着替えようと思って昨日のうちに服も置いていたけれど、寝坊したせいで浴衣のままになってしまった。


「お、おはよう!そんなことないと思うけど……!え、えーっと、初めてだったから着方もよくわかってないし……!」


さっき乱れていたところは直したけれど、それでも恥ずかしい……!
寝坊したことを心底後悔する。