夜明け3秒前

ホテルに着くと、フロントで部屋のカードキーを受け取る。
私は306号室、流川くんは隣の305号室。


一度部屋を見て荷物を整理し、それから夜ご飯を食べに行こうということになった。
ロビーからエレベーターに乗り、3階へと上がる。


エレベーターの壁には、大浴場やマッサージが受けられるということなど、ホテルについていろいろなことが書いてある。
大浴場なんて修学旅行でしか入ったことがない。


「すっげー広いよなあ」
「うん、ちょっと楽しみ」


会話をしていると3階に着いたようで、チーンと鳴ってエレベーターが止まる。
降りると一直線に部屋が続いていた。

ほのかな明かりがついているだけで、とても優しい空間だ。
ところどころにお花が飾ってあり、和の雰囲気を感じる。


少し歩くと、305、306と扉に書いてある部屋を見つけた。
ドアノブを回すけれど開かない。


「はは、カードキーをドアノブの部分に当てると開くよ」

「えっ、そっか!ありがとう」


何も考えずに開けようとしたことが恥ずかしい。
そりゃそうだよね、鍵はかかってるよね……


カードキーを彼の言う通りにかざすと、ピッと音がして鍵が開いた。

すごい……!現代的だ……!


部屋の中に一歩入ると、トイレにお風呂、机にベッドがあるのが見える。
1人部屋のわりに広くて、とても快適だ。


「凛月、中から鍵かけられるから忘れないようにな」

「わかった。ありがとう」

「うん、じゃあ10分後に部屋の前で」


彼の言葉に頷いて、扉を閉め、ちゃんと鍵もかける。
なんというか……ホテルってすごい。


この部屋も、受付の人たちも、写真で見た大浴場も。
感動しながら部屋を眺める。


ベッドはふかふかで、眠り心地もよさそうだ。
今日はたくさん歩いたし、もしかしたらよく眠れるかもしれない。

持ってきたキャリーケースを壁際に置いて、荷物の整理をする。
買ったメイク道具と、流川くんからもらったイヤリングを大事にしまった。