夜明け3秒前

「え?」


どういうことかわからないまま、おもむろに受け取る。


「開けてみて」
「え、いいの?わかった」


彼に言われるまま袋を開けると、さっき見ていた月モチーフのイヤリングが入っていた。


「え、これって」
「よければもらってくれない?旅行に来てくれたお礼」


彼はにこにこと笑っているけれど、私はいろいろな感情が積もってくる。


「で、でも」


お礼を言わないといけないのは私の方なのに。
だけど彼にあげられるものなんて持っていない。

それに、流川くんが何をもらったら嬉しいのか、私は全然知らない。
好きな飲み物はアイスティー、ということくらいしか……


プレゼントをもらって嬉しいという気持ちもあるはずなのに、それ以上に申し訳なさが勝ってしまう。


「いらない?」


そういうふうに聞かれると、いらない、なんて言えるわけがなくて。


「い、いる!」

「よかった。それ、凛月に似合うだろうなと思ったんだ」


嬉しそうに笑う彼はやっぱり眩しくて、暗い気持ちが浄化されるような気がする。


「ありがとう、流川くん!大切にするね」
「うん、喜んでもらえてよかった」


嬉しい気持ちが沸き上がってきて、笑顔がこぼれる。
プレゼントをもらうって、こんなに嬉しいものだったんだなあ……


「あ、お礼に流川くんも欲しいものない?」
「え?うーん、今は特にないかなあ」


少し困ったような表情で笑う流川くん。
私もお礼がしたいのに。


「じゃあ、私にしてほしいことない?なんでもするよ!」

「え?」

「え?」


彼の動きが突然止まって、つられるように私も止まる。
いつもの笑顔がなく、無表情で見られているのが落ち着かなくて、また変なこと言っちゃったかなと不安になる。