夜明け3秒前

その次に興味を引かれたのは、メイク道具だった。
私はほとんど知らないブランドごとに、商品棚が分けられている。


ファンデーションにアイシャドウ、アイライナーやマスカラ。
麻妃が使っているものや、CМで流れているものくらいしかわからないけれど、どれもキラキラして見える。


メイク道具も持っていないし、ちゃんとしたこともないけれど、練習したら私でもできるかな。
上手くなったら、少しでもかわいくなれたりするのかな。

そしたらあの女性たちみたいに、流川くんの隣に立っても恥ずかしくない自分になれたりするのだろうか。


「流川くん、ちょっとレジに行ってくるね」
「うん、わかった。いってらっしゃい」


詳しくないからよくわからないけれど、私でも買える値段のものでナンバーワン!と書かれている商品を手に取ってレジに向かう。

店員さんが綺麗な袋に入れてくれ、お礼を言って受け取る。


流川くんの元に戻ると、私と入れ替わるように彼も「ちょっと待ってて」とレジへ行ってしまった。


しばらくして帰ってくると、彼の手にも私と同じ袋が握られている。
お店を出て、またゆっくりと歩く。


「凛月は何買ったの?」
「えっ、秘密、かな」


なんとなくメイク道具だと答えるのが恥ずかしくて、笑ってごまかす。


「あはは、そっか。じゃあはい」


彼も笑うと、持っていた袋を私に差し出してきた。