夜明け3秒前

「ご、ごめんね大丈夫!ちょっとびっくりしちゃって、ありがとう」


お礼を言って、流川くんから離れる。
自転車にもびっくりしたけれど、人にこうして触れられることがないせいか、体が固まってしまった。


「それならよかった、気を付けて歩こっか」
「う、うんっ」


彼の方をちらっと見ると、安心したような優しい表情をしていて、また心臓がドキッとする。
なんだか最近よくドキドキしている気がするけれど、寿命縮まってないかな……

ふと不安になって、手を心臓の位置に当てる。
トクトクとわずかに振動しているのがわかって少し落ち着いた。


ぼーっとするのよくないな。
反省して気を付けないと。


何度そう心に誓って破ってきたかわからない。
自分なりに努力していても、いつのまにかぼーっとしてしまっている。


ため息をつきそうになったとき、


「凛月、あの店入ってもいい?」


と尋ねられた。


彼が指を指す方向を見てみると、雑貨屋さんが建っていた。
少しレトロな雰囲気のおしゃれなお店。


「うん、私も入ってみたい」


そう答えてお店に入ると、店員さんが「いらっしゃいませー」と挨拶をしてくれる。

店内を見回すと、レトロな食器や文房具、アクセサリーやメイク道具まで、たくさんのものが綺麗に並んでいた。


こういうのは見ているだけでも楽しいなあ。
気になったものはたまに手に持ってみたりしながらお店を回る。


「わ、かわいい」


アクセサリーが飾ってあるところで足が止まった。
どれもかわいいけれど、目に留まったのは月モチーフのイヤリング。

星も一緒に付いていて、キラキラしてかわいいのに大人っぽい。
こういうの、麻妃は似合うんだろうなあ……


私はアクセサリーをつけたことがないけれど、こういうの憧れちゃうな。


「気になるの?」


いつのまにか隣にいた流川くんにそう聞かれて、ドキッと心が跳ねる。


「わっ!びっくりした……」
「ごめん、驚かすつもりじゃなかったんだけど」
「ううん、私の方こそごめんね!」


勝手に気まずさを感じて、その場をそそくさと離れる。