次の授業は、担任が受け持つ教科の数学だった。
「よーし、お前ら始めるぞー」
まだ20代だという先生は、他の先生たちよりも比較的情熱的な人だと思う。
体育祭前には毎日放課後残って競技の練習をさせられた。
そして体育祭は無事優勝して、まだ5月だったのにも関わらずクラスの仲はとても良くなった。
それからみんなで打ち上げに行ったらしいが、そこには先生もいたらしい。
もちろん私は打ち上げには行かなかったけれど。
その理由はただひとつ。
「ん?なんだ佐藤いたのか!」
先生が笑いながら言ったその一言で、教室中の目線が私に集まる。
そして、みんな揃ってバカみたいに笑うんだ。
「やっぱり存在感がないと気づかないなあ」
先生は今日も、まるで悪気はないですというようなまっさらな笑顔で、私の心を何度も釘で刺している。
「ホントだ気づかなかった〜」
「今日も来てたんだ、うっざあい」
前の席のチャラいと有名な男の子も、斜め後ろの最近彼氏ができたという女の子も、みんなそう。
私のことが嫌いなのだ。
いや、嫌いなんて言葉じゃ足らないかもしれないけれど。
ああ、なんだ、今日もいい事なんてなかった。
痛い、ずっと痛い。
そのとき、ガタンと隣から椅子の音がした。
はっとして見ると、麻妃が立っていた。
「あんたら、いい加減にしなよ」
その声は怒りで震えていた。
いつもは綺麗なその瞳も、今はただ威圧感しかなくて怖い。
怒ってくれている、私のために。
ズキズキ痛かった心に、彼女がしてくれたその行動はすごく温かくて。
「友利、今は授業中だぞ?座りなさい」
でも現実はそう甘くなかった。
「まーた庇ってるよ、あんな奴の味方についても意味ないのにね」
「偽善者乙〜」
まるでどうして怒っているのかわからないととぼけた様子の教師。
クスクス笑うクラスメイト。
また心が痛くなる。
でもそれ以上に、彼女が悪く言われているのが辛くて、どうしようもなくて。
「っ、あのさあ!」
声を荒らげた麻妃の手を、そっと取る。
彼女は私と目が合うと、とても悲しい顔をした。
「私なら大丈夫だから、ね?」
「何言ってんの、凛月、こいつらは」
「麻妃」
手をぎゅっと握り、彼女の名前を呼ぶと、納得しない様子だったけれどガタンと音を立てて座った。
「友情ごっこかよ」
またバカにした笑い声に耳が痛くなったけれど、それからは何もなかったかのように授業が続けられた。
「よーし、お前ら始めるぞー」
まだ20代だという先生は、他の先生たちよりも比較的情熱的な人だと思う。
体育祭前には毎日放課後残って競技の練習をさせられた。
そして体育祭は無事優勝して、まだ5月だったのにも関わらずクラスの仲はとても良くなった。
それからみんなで打ち上げに行ったらしいが、そこには先生もいたらしい。
もちろん私は打ち上げには行かなかったけれど。
その理由はただひとつ。
「ん?なんだ佐藤いたのか!」
先生が笑いながら言ったその一言で、教室中の目線が私に集まる。
そして、みんな揃ってバカみたいに笑うんだ。
「やっぱり存在感がないと気づかないなあ」
先生は今日も、まるで悪気はないですというようなまっさらな笑顔で、私の心を何度も釘で刺している。
「ホントだ気づかなかった〜」
「今日も来てたんだ、うっざあい」
前の席のチャラいと有名な男の子も、斜め後ろの最近彼氏ができたという女の子も、みんなそう。
私のことが嫌いなのだ。
いや、嫌いなんて言葉じゃ足らないかもしれないけれど。
ああ、なんだ、今日もいい事なんてなかった。
痛い、ずっと痛い。
そのとき、ガタンと隣から椅子の音がした。
はっとして見ると、麻妃が立っていた。
「あんたら、いい加減にしなよ」
その声は怒りで震えていた。
いつもは綺麗なその瞳も、今はただ威圧感しかなくて怖い。
怒ってくれている、私のために。
ズキズキ痛かった心に、彼女がしてくれたその行動はすごく温かくて。
「友利、今は授業中だぞ?座りなさい」
でも現実はそう甘くなかった。
「まーた庇ってるよ、あんな奴の味方についても意味ないのにね」
「偽善者乙〜」
まるでどうして怒っているのかわからないととぼけた様子の教師。
クスクス笑うクラスメイト。
また心が痛くなる。
でもそれ以上に、彼女が悪く言われているのが辛くて、どうしようもなくて。
「っ、あのさあ!」
声を荒らげた麻妃の手を、そっと取る。
彼女は私と目が合うと、とても悲しい顔をした。
「私なら大丈夫だから、ね?」
「何言ってんの、凛月、こいつらは」
「麻妃」
手をぎゅっと握り、彼女の名前を呼ぶと、納得しない様子だったけれどガタンと音を立てて座った。
「友情ごっこかよ」
またバカにした笑い声に耳が痛くなったけれど、それからは何もなかったかのように授業が続けられた。



