夜明け3秒前

そんなに心配しなくても、絶対大丈夫なのに。
だけど、わかっていてもその優しさが嬉しい。


「でも、よく凛月のお母さん許してくれたね」

「うん、それは本当にそう思う。流川くんのおかげ」


そのせいで彼の体調を悪くしてしまったけれど……


「へえ、案外やるじゃん流川。一体どうやって説得したの?」

「え?そ、それは……言っていいの、かな」


いや、よくないだろう。
女装すると気分が悪くなるってことは、あんまりしたくないってことだろうし……


何て言ったらいいか迷っていると、察してくれたのか「まあいいけどね」と笑ってくれた。


「そっか。でも……あたしができないこと、流川はできたってことだもんね」

「え、そんなことないよ、麻妃にだって……」


また切なく話す麻妃に声をかけるけれど、ほとんど意味がないことくらいは知っている。


「うん、わかってる。そう勝手に思っちゃうだけ。あー!でも妬けるな~!顔もイケメンなのに性格までとはね」


ハンバーグを食べるペースを速めながら、ため息をつく。
でも、そんな姿すら彼女は様になっていた。


「麻妃だって負けてないよ」


心からの言葉をかけると、いつものように意地悪くにししっと笑う。

「まあね!」