夜明け3秒前

「変わるって、例えば……?」

「ん?えーそうだな、まずは意識を変えるとか、自分のことも好きになるとか……依存先をひとつにしない、とか?」


なるほど……
うんうんと頷いていると、麻妃は話を続ける。


「あとはー……趣味を増やしたりするのもいいかな。まあとにかく、こうして一歩踏み出せた訳だし、これからだね」


彼女の笑顔はとても眩しい。
見ているだけで、元気がもらえる気がする。


「うん、頑張ろう」


パチンと優しくハイタッチしたところで、店員さんが美味しそうな料理を運んできてくれた。
いい匂いがして、お腹が急激に減る。


「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい、ありがとうございます」


お礼を告げると、人の好さそうな笑みを浮かべ


「ごゆっくりどうぞ」


と言って去っていく。


「じゃ、食べよーか。いただきまーす」
「いただきます」


二人で手を合わせて挨拶をし、ご飯を食べる。
喧嘩をしている間、学校で一緒に食事することもなかったから、なんだか懐かしい。


あ、そういえば。


「麻妃、ずっと聞きたかったんだけど、夏休み前に流川くんのところに行ったんだよね?どうしてあんなこと……」


流川くんに話を聞いてから、気になっていたことだ。
そのおかげで、こうして話す勇気がでたんだけれど。


彼女はああ、と思い出したような顔をしたあと、罰が悪そうな表情に変わる。


「あれは、凛月が急に流川の話するから気になって……あの喧嘩の直前だったし、変なことされてないか聞きに行っただけ」


まさかそんな心配してくれていたなんて……
嬉しいのと同時に、麻妃のことを全然考えていなかった自分が恥ずかしい。


「そしたらあいつ、‟友達だよ”って言って笑うし。隣にいられないあたしの変わりによろしくって頼んだの」


もー、なんか恥ずいんだけどと言って笑う麻妃に、私もつられる。
彼女なりに私のことを考えていてくれたと知って、心が温まると同時に切なくなる。