夜明け3秒前

憂鬱になるくらい眩しい朝の光で目が覚めた。


日が昇ってから起きたことなんて久しぶりだ。
どうして深く眠れたんだろう……


そんなことを考えながら重い体を起こす。



「……え」



ベッドの近くにある時計を見ると、9時25分を指していた。



「……遅刻だ」



サーっと血の気が引いていく。
今まで寝坊したことないのに、どうして急に。



絶対に怒られる、また何か言われる。



自分で原因を作らないようにできるだけ頑張っていたのに、やはり上手くいかないこともあるらしい。


急いで部屋を出た。


リビングに向かうと、いつもの朝の光景はなかった。
誰もいない、静かな空間。


当たり前か。


父は仕事だし、兄弟たちは学校だ。
母は今の時間だと買い物に出かけているだろう。



……誰も私が遅刻するからって起こしてくれない。



それも当たり前だ。
私は、この家族にとって家族じゃない。


空気みたいなものだ。
いや、空気でもないのか。


そこに居るだけで嫌われてしまう、ゴキブリみたいなものだ。



「……急がなきゃ」



いつの間にかついてしまった癖で、独り言を呟く。


今すぐ学校へ向かいたいけど、身だしなみだけは確認しなければ。
昨日のことで痣になっていないか、鏡の前に立って1人でくるくる回る。


幸いにも顔にはできておらず、肩が少し青くなっているだけだった。



「よかった……」



今日はツイているかもしれない。
何かいい事おきないかな。



「行ってきます」



ちょっと希望を抱いて、いつもより少し明るい気持ちで、家の扉を開けた。