そして次の日、私はファミレスの前で麻妃を待っていた。

昨日の夜に『時間は10時』とメールが届いていて、待ち合わせの時間を決めていなかったことに気づいた。


急いで『わかった!』と返信したけれど、会うことだけを考えていて何とも恥ずかしい。
もうすぐで約束の時間だけれど、麻妃は本当に来てくれるかな。


彼女のことだから絶対に来てくれるってわかっているけれど、どうしても不安な気持ちの方が勝ってしまう。


楽しそうに街を歩いている人をぼーっと見ていると、


「……ごめん、待たせたね」


と小さく声をかけられた。


いつのまにか麻妃が目の前に立っていて驚く。


癖がいつの間にか出ていたことに気づき、はっとする。
大丈夫、と緊張でカラカラになった喉から声を出した。


「とりあえず店に入ろう」と言われて頷き、麻妃の後ろについて行く。
久しぶりに会った彼女は変わらずスタイルが良くて、後ろ姿ですら美人だ。


「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「2人です」


にこにこした優しそうな店員さんに案内してもらい、席に着く。
夏休みとはいえまだ朝だからか、お客さんはまばらで、穏やかなBGMが聞こえる。


「とりあえずドリンクバーでいい?」
「う、うん、大丈夫」


それだけ答えると、あとは麻妃が店員さんを呼び注文をしてくれる。
いつもの光景だ。


学校が早く終わった日、お母さんの許しが出た日、たまにここでのんびりとすることがあった。
ご飯を食べて、たわいない話をする。


それが何故かとても懐かしく思えて、グッときてしまった。
視線を少し下げながら、さっきは余裕がないせいで見られなかった彼女の方をチラ見する。


白色のオフショルダーに、ゆったりとした水色のジーンズ。
とてもシンプルだけど似合っていて、彼女はモデルなのだと実感する。


そして少し羨ましい。


流川くんもだけど、どうやって美人はシンプルな洋服を着こなしているんだろう。
もちろんスタイルのいい体と、綺麗な顔、そしてそれに劣らない努力、なんだろうけれど。


店員さんが注文を受けて、ドリンクバーの説明を簡単にすると去っていく。
一気に空気が重くなった気がして、口が開かない。