「え、えっと……相談とかしたくて」
「相談?何の?」
「……旅行に来ていく服、とか」


本当でも嘘でもない言葉が口から出て行く。
もし麻妃と喧嘩をしていなかったら、仲直りできたら、したいことだ。


だけど今はそれができるかどうかわからない。


「服ですって?今持っている服じゃ物足りないって言ってるの?」

「ち、違う、そうじゃなくて……」


母はどんどん眉を吊り上げる。
私は一言もそんなこと言ってないのに、勝手に話が変わる。


「あんたみたいな可愛くない子に、高いお金を出して服を買ってあげているのに、どうしてそんなことが言えるの!」


ああやってしまった、また間違ってしまった。
今更気づいたってもう遅い。


「莉子を見てみなさい!あんたの妹なのに、こんなにも可愛くて愛らしい!」


すぐそばにいた妹をぐっと引き寄せると、優しく頭をなでる。
妹はとても誇らしそうに笑っていた。


確かに莉子は可愛い。
まだ中学生とは思えないくらい大人っぽいのに、笑うと無邪気で、母が溺愛するのもわかる。


「だから男の子にもモテるのね、ああ本当に自慢できる娘だわ」


確かに、確かにそうだ。
私は男子に告白したことも、されたこともない。

恋愛だってしたことない、する余裕だってない。
でも妹は違う。

今は反抗期に入ったのか、素直じゃないところもあるけれど、なんだかんだ面倒見のいい、優しい女の子だから。


彼女がモテるのもわかる、わかってしまう。


「それなのに、あんたときたら……!」


温かい眼差しから変わり、キッと私を睨む。
それはまるで針のようで、目が合うだけで心が痛くなる。


「お姉ちゃんなのに、どうしてできないの!?」


その言葉はぐっと私へのしかかる。
悲しい、辛い、そんな感情が津波のように襲ってくる。

だけど悔しいとか、どうしてそこまで言われなきゃいけないの、なんていう気持ちもあった。