「えっと、中学生のときから仲良くしてくれてる友達が一人いるんだけど……」
「その子ってもしかして、廊下で喧嘩してた子?」
さっきの1組の男子と似たような質問をされてびっくりする。
まさか流川くんも知ってたなんて。
「うん、たぶんそうなんだけど……やっぱり目立ってた、かな」
恥ずかしいのと辛いのが混ざり合って、不安になる。
あのときは必死だったし、そのあとも意気消沈していたから、周りのことなんて考えてなかった。
「んー……確かにちょっと目立ってたんじゃないかな。あのモデルの友利と凛月が廊下で喧嘩してたって聞いた」
そうだったんだ。
きっと相手が麻妃だったから、別校舎の1組まで話がいってしまったんだろうな。
もしこれが私と麻妃や人気者の子以外だったなら、広まっても同じ校舎の6組や8組までしかいっていないはずだ。
やっぱり麻妃はみんなに注目されているんだなあ……
もちろんわざとじゃなかったけれど、廊下であんな風に言うんじゃなかったと後悔する。
麻妃は何か言われてないかな。
心配してくれているだけなのに、だいぶ迷惑をかけてしまった。
「まだ仲直りしてない?」
「え?」
流川くんにそう聞かれて、一瞬意味がわからなかった。
だけど、そのあとすぐにそうかと納得する。
「してない……けど、そんなこともわかっちゃうなんて、やっぱり流川くんってすごいね」
私の好きな飲み物を何も聞かずとも買ってきてくれたように、彼はやはりエスパーなのかもしれない。
「すごくなんてないよ。ただそうかなって思っただけ」
おかしそうに笑っているのを見ていると、なんだか私の気持ちまで少し楽になる。
「凛月さえよければ詳しく聞かせてくれない?」
そして、何故か彼には話してもいいかなと思ってしまう。
これも彼が人気者の理由のひとつなのかな。
うん、やっぱり流川くんってすごい。
「……麻妃とは、中学の入学式のときに仲良くなったんだ。そのときにはもう雑誌に載っちゃうくらいかわいくて、おしゃれで……すごくかっこよくて」
今でも、出会った日のことは昨日のことのように思い出せる。
隣の席に座っている子が、まるで画面の中からでてきたみたいにかわいくて、すごく緊張した。
「でも麻妃は、モデルであることを驕ることは一度もなくて、みんなに好かれる人気者で……それでも私の友達でいてくれて……」
彼女の人気はいつも凄まじかった。
男女ともに好かれ、先生受けもいい。
でもそれは、彼女がモデルの仕事をしているくらいかわいいからじゃない。
間違いなく麻妃の人柄だった。
「……私の顔に痣ができた日、麻妃は誰よりも怒って心配してくれたんだ。それで、本当のことを話したの」
思い出すだけで、胸がぎゅっと締め付けられて苦しい。
流川くんは相槌を打ちながら、静かに聞いてくれた。
「そしたら、麻妃が私の家にまで来てくれて……お母さんたちと話を、してくれて……」
声が語尾に近づくにつれて、どんどん小さくなる。
「……お母さんたちは、すごく酷い言葉を……麻妃に、怒鳴ってて……」
麻妃はとても怒っていたけれど、お母さんたちの前では冷静だった。
けんか腰なんかじゃなくて、ただただ質問をしている感じで、きっと隣に座っていた私の方が緊張してたと思う。
だけど、お母さんが
『この子が全部悪いのよ!他の兄妹たちよりも劣って、かわいくない!先生にも親戚にも近所の人にだって、誰にも自慢できない!私は責められる筋合いなんてないわよ!』
そう言ったとき、麻妃は静かに立って、
『自分の子どもたちを比べて平等に愛せないなら、兄妹なんて産むな!』
それだけ言うと挨拶をして静かに家を出たことを、ずっと覚えてる。
「その子ってもしかして、廊下で喧嘩してた子?」
さっきの1組の男子と似たような質問をされてびっくりする。
まさか流川くんも知ってたなんて。
「うん、たぶんそうなんだけど……やっぱり目立ってた、かな」
恥ずかしいのと辛いのが混ざり合って、不安になる。
あのときは必死だったし、そのあとも意気消沈していたから、周りのことなんて考えてなかった。
「んー……確かにちょっと目立ってたんじゃないかな。あのモデルの友利と凛月が廊下で喧嘩してたって聞いた」
そうだったんだ。
きっと相手が麻妃だったから、別校舎の1組まで話がいってしまったんだろうな。
もしこれが私と麻妃や人気者の子以外だったなら、広まっても同じ校舎の6組や8組までしかいっていないはずだ。
やっぱり麻妃はみんなに注目されているんだなあ……
もちろんわざとじゃなかったけれど、廊下であんな風に言うんじゃなかったと後悔する。
麻妃は何か言われてないかな。
心配してくれているだけなのに、だいぶ迷惑をかけてしまった。
「まだ仲直りしてない?」
「え?」
流川くんにそう聞かれて、一瞬意味がわからなかった。
だけど、そのあとすぐにそうかと納得する。
「してない……けど、そんなこともわかっちゃうなんて、やっぱり流川くんってすごいね」
私の好きな飲み物を何も聞かずとも買ってきてくれたように、彼はやはりエスパーなのかもしれない。
「すごくなんてないよ。ただそうかなって思っただけ」
おかしそうに笑っているのを見ていると、なんだか私の気持ちまで少し楽になる。
「凛月さえよければ詳しく聞かせてくれない?」
そして、何故か彼には話してもいいかなと思ってしまう。
これも彼が人気者の理由のひとつなのかな。
うん、やっぱり流川くんってすごい。
「……麻妃とは、中学の入学式のときに仲良くなったんだ。そのときにはもう雑誌に載っちゃうくらいかわいくて、おしゃれで……すごくかっこよくて」
今でも、出会った日のことは昨日のことのように思い出せる。
隣の席に座っている子が、まるで画面の中からでてきたみたいにかわいくて、すごく緊張した。
「でも麻妃は、モデルであることを驕ることは一度もなくて、みんなに好かれる人気者で……それでも私の友達でいてくれて……」
彼女の人気はいつも凄まじかった。
男女ともに好かれ、先生受けもいい。
でもそれは、彼女がモデルの仕事をしているくらいかわいいからじゃない。
間違いなく麻妃の人柄だった。
「……私の顔に痣ができた日、麻妃は誰よりも怒って心配してくれたんだ。それで、本当のことを話したの」
思い出すだけで、胸がぎゅっと締め付けられて苦しい。
流川くんは相槌を打ちながら、静かに聞いてくれた。
「そしたら、麻妃が私の家にまで来てくれて……お母さんたちと話を、してくれて……」
声が語尾に近づくにつれて、どんどん小さくなる。
「……お母さんたちは、すごく酷い言葉を……麻妃に、怒鳴ってて……」
麻妃はとても怒っていたけれど、お母さんたちの前では冷静だった。
けんか腰なんかじゃなくて、ただただ質問をしている感じで、きっと隣に座っていた私の方が緊張してたと思う。
だけど、お母さんが
『この子が全部悪いのよ!他の兄妹たちよりも劣って、かわいくない!先生にも親戚にも近所の人にだって、誰にも自慢できない!私は責められる筋合いなんてないわよ!』
そう言ったとき、麻妃は静かに立って、
『自分の子どもたちを比べて平等に愛せないなら、兄妹なんて産むな!』
それだけ言うと挨拶をして静かに家を出たことを、ずっと覚えてる。



