夜明け3秒前

今日は何もかもボロボロだった。
かばんと借りたもの等を入れた紙袋を持って教室を出る。


あれから何回も麻妃に謝ろうと声をかけようとしたけれど、結局やめてしまう。



謝ってその次はどうするの?
麻妃のことだから、きっと本当のことを言えといってくるだろう。


じゃあもし本当のことを話したら、麻妃はどう思うだろうか。
きっと優しい彼女のことだから、傷ついてしまうだろう。



いや、今でも彼女のことは十分傷つけてしまっているんだけれど。
だけど、もし、もしも『それなら離れよう』と言われたら……


拒否することなんてできない。
でも、離れたくない。



「はあ……」



そう考えた結果がこれだ。
傷つけた挙句、結局はひとことも話すことはなくなってしまった。


なんて自己中心的な考え。
自分のことながら嫌になるな。


ぼーっと考えていると、2年1組と書かれた表札が目に入る。
教室の中をチラッと伺っていると、一人の男子と目が合った。



「あれ、誰かお探し?っていうか君、今日廊下で喧嘩してた子?」


「えっ……ええっと……」



廊下で喧嘩?

もしあれが喧嘩に入るなら、そうかもしれない。
というかなんで、1組の人が知っているんだろう……


なんて答えたらいいのかわからず固まっていると、ひょこっと隣から女子が現れた。



「ちょっと、聞いていいことと悪いこともわかんないの?ごめんね、誰か探してるならわたし呼ぶよ」



ショートヘアが似合う、すごくかっこいい女子だった。
助けてくれたのだと気づいて、心が温かくなる。



「あの、ありがとう、えっと……流川くんっていますか?」


「流川ね!おーい流川ー!呼ばれてるよ!」



女子が呼んでくれると、流川くんはすぐに来てくれた。
本当に1組だったんだなあ、と感動してしまう。



「ごめん凛月、待たせた?」

「う、ううん全然」



紙袋を渡そうと手を伸ばしたところで、


「えっ!流川、いつのまに彼女つくってたんだ羨ましい!」


とさっきの男子が声をあげる。
びっくりして、そのまま手の動きが止まってしまう。



「おいコラ!さっきからデリカシーなさすぎ!」

「いたあっ!悪かったってば!」



ショートヘアの女子に蹴られ、教室の中に戻っていった。


……ちょっと痛そうだけど、大丈夫かな……?



「あー……ごめん凛月、ここ離れよっか」

「う、うん」



流川くんの言葉にうなずいて、そのまま後ろをついて行った。